【ミラノ五輪】スノーボード荻原大翔の必殺技「バックサイド2340」とは?6回転半の衝撃と放送予定を徹底解説
2026/02/06
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2026年2月5日。
イタリア北部、アルプスの山々に囲まれた「リヴィニョ」の夜空に、新たな歴史が刻まれようとしています。
冬季オリンピック・ミラノ・コルティナ大会、スノーボード男子ビッグエア予選。
「ミラノ五輪」という名前から、華やかなミラノの市街地での開催をイメージされている方も多いかもしれません。
しかし、決戦の舞台はそこではありません。
ミラノから車で北へ約5時間。
標高1,800mを超え、その厳しい寒さから「イタリアの小チベット」と呼ばれる山岳リゾート地、リヴィニョ。
酸素が薄く、張り詰めた冷気が支配するこの過酷な環境で、世界中の視線が一人の日本人若手スノーボーダーに注がれています。
彼の名は、荻原 大翔(おぎわら ひろと)。
「人間はどこまで回れるのか?」
そんな物理法則への問いかけに対する答えを、彼は持っています。
その答えの名は、「バックサイド2340(トゥウェンティスリー・フォーティー)」。
空中で横に6回転半。
かつてはゲームの世界でしかあり得ないと言われたこの超大技を、現実の世界で、しかもオリンピックという最高の舞台で成功させようとしているのです。
「回転数が多すぎて、見ても何が起きているか分からない」
「なぜ彼だけがそんなに回れるの?」
「今夜の放送、どこに注目すればいい?」
そんな疑問をお持ちのあなたへ。
本記事では、荻原大翔選手が操る「神の技」の全貌と、誤解されがちな開催地の真実、そして今夜の予選を100倍楽しむための観戦ポイントを、現地事情や専門的な技術論を交えて徹底解説します。
これを読めば、深夜のテレビ観戦が、一生忘れられない体験になるはずです。
【基礎知識】スノーボード界の革命児・荻原大翔とは?
まずは、今回の主役である荻原大翔選手について、その人となりとこれまでの歩みを振り返りましょう。
彼は単なる「回転が得意な選手」ではありません。
スノーボードという競技の概念そのものを書き換えてきた、若き革命児なのです。
幼少期からの英才教育と「ネコマ」での日々
2005年7月19日生まれ、現在20歳。
茨城県牛久市出身の彼は、幼い頃からスノーボードに親しんできました。
彼の才能を急速に開花させたのは、福島県にあるスキー場「星野リゾート ネコマ マウンテン(旧アルツ磐梯)」での練習環境です。
ここには、世界レベルの大会で使用されるサイズと同等の巨大なジャンプ台(キッカー)が整備されています。
荻原選手は、TOKIOインカラミに所属しながら、この恵まれた環境で来る日も来る日もジャンプを繰り返してきました。
「恐怖心」よりも「好奇心」が勝る少年時代。
彼は転倒を繰り返しながら、空中で体をコントロールする術を体に叩き込んできたのです。
また、この「ネコマ」は、北京五輪金メダリストである中国の蘇 翊鳴(スー・イーミン)選手も、かつて日本人コーチの佐藤康弘氏と共にハードなトレーニングを積んだ「約束の地」でもあります。
二人は幼少期から同じ日本の雪山で技を磨き合った、いわば兄弟弟子のような関係。
国境を超えたライバルストーリーは、ここから始まっていました。
「骨折しながら金メダル」伝説のX Games 2025
彼の名前が世界のスノーボード史に永遠に刻まれたのは、2025年1月にアメリカ・アスペンで開催された世界最高峰の大会「X Games(エックスゲームズ)」でした。
この大会で、彼は人類史上初となる「バックサイド2340(6回転半)」を成功させ、金メダルを獲得。この偉業はギネス世界記録にも認定されました。
しかし、この偉業の裏には、あまり知られていない衝撃的な事実があります。
実は荻原選手、この大会の直前練習で右腕(手首付近)を骨折していたのです。
スノーボードの着地時には、体重の数倍から十数倍もの衝撃がかかります。通常なら棄権するような大怪我です。
それでも彼は出場を強行しました。なぜなら、彼が空中でボードを掴む(グラブする)のは「左手」だったからです。
「右手は使わないから大丈夫」
そう自分に言い聞かせ、右腕にギプス(キャスト)を巻いた状態で、世界で誰もやったことのない6回転半に挑み、見事に着地(ストンプ)を決めたのです。
「骨折していても、この技なら決められる」
そう確信するほどに練り上げられた技術と精神力。
それが、荻原大翔というアスリートの凄みなのです。
【徹底解剖】必殺技「バックサイド2340」の凄まじさ
では、荻原選手の代名詞である「バックサイド2340」について、技術的な側面から深掘りしていきましょう。
ただ「たくさん回る」という言葉だけでは片付けられない、物理学の限界に挑む技術がそこには詰まっています。
「2340」という数字のマジックと歴史的インフレ
スノーボードの回転数は、360度(1回転)を基準に計算されます。
この数字が大きくなればなるほど、滞空時間中に必要な回転速度は指数関数的に跳ね上がります。
以下の進化の歴史を見ていただければ、2340という数字の異常さが分かるはずです。
| 技名(度数) | 回転数 | 当時の状況と金メダルライン |
|---|---|---|
| 1080 | 3回転 | 1998年長野五輪(ハーフパイプ)当時の最高難度レベル。 |
| 1440 | 4回転 | 2018年平昌五輪(ビッグエア初採用)での優勝ライン。 |
| 1800 | 5回転 | 2022年北京五輪の金メダル技。 |
| 2160 | 6回転 | 現在のトッププロの標準装備になりつつある。 |
| 2340 | 6回転半 | 人類未踏の領域。荻原大翔の世界。 |
※スノーボードのビッグエア種目が正式にオリンピック種目となったのは2018年平昌大会からです。
フィギュアスケートで羽生結弦選手が挑戦した4回転アクセル(4回転半=1620度)と比較しても、さらに2回転(720度)も多いことになります。
もちろん、スノーボードは巨大なキッカー(ジャンプ台)を使うため滞空時間は長いですが、それでも板を履いた状態でこれだけ回るには、F1カー並みの遠心力に耐える強靭な体幹が必要です。
興味深いことに、荻原選手がスノーボードで2340を成功させた翌日、フリースタイルスキーでもイタリアの選手が史上初の2340を成功させました。
2026年ミラノ・コルティナ大会は、スノーボードとスキーの両方で「2340時代」が幕を開ける、歴史的な転換点となるのです。
なぜ「バックサイド」が難しいのか?〜恐怖のブラインド着地〜
技名の冒頭に付く「バックサイド」。
これは回転方向を表す用語ですが、実はここに最大の難関が隠されています。
スノーボードには大きく分けて2つの回転方向があります。
- フロントサイド(Frontside):お腹側(進行方向)に向かって回る。視界が開けやすく、恐怖心が比較的少ない。
- バックサイド(Backside):背中側に向かって回る。飛び出した瞬間に進行方向が見えなくなる「ブラインド」の状態になるため、恐怖心が強く、空中感覚を見失いやすい。
荻原選手は、この視界の悪い「バックサイド」方向への回転を得意としています。
キッカーを飛び出した瞬間、背中側へ猛烈な勢いでスピンを開始し、景色が6回半も高速で切り替わる中で、正確に着地点を見極める。
特に6回転半(半回転で終わる)の場合、着地の瞬間まで自分がどこを向いているか視認しづらいという特性があります。
彼がこれを成功できるのは、視覚情報に頼らずとも自分の体の傾きや位置を把握できる、極限まで研ぎ澄まされた「固有受容感覚」があるからに他なりません。
「ミュート」から「ウェドル」へ〜技名に込められた歴史〜
ここで一つ、通(ツウ)な観戦ポイントをお教えしましょう。
荻原選手が2340を行う際、空中でボードの前方のエッジを掴むグラブを行いますが、実況や解説でこの技名がどう呼ばれるかに注目してください。
かつて、この掴み方は「ミュートグラブ(Mute Grab)」と呼ばれていました。
しかし現在、公式の場や専門家の間では「ウェドルグラブ(Weddle Grab)」という呼称への変更が進んでいます。
理由は、この技の考案者であるクリス・ウェドル(Chris Weddle)氏にあります。
彼は聴覚障害を持っていました。かつて「Mute(口がきけない)」という言葉が使われていたことに由来する技名でしたが、これは差別的なニュアンスを含む言葉でもあります。
近年、スケートボード界のレジェンド、トニー・ホーク氏らが「考案者の名前に敬意を表すべきだ」と提唱し、差別的な言葉を排除する動きの中で「ウェドルグラブ」への変更が定着しつつあります。
もし放送で「ウェドルグラブ」という言葉が聞こえたら、「ああ、あの掴み方のことだな」と思い出してください。
この背景を知っているだけで、スノーボードというカルチャーへの理解が一段と深まるはずです。
開催地「リヴィニョ」の魔力〜標高1,800mの影響とは〜
冒頭でも触れましたが、今回の会場はミラノ市内ではありません。
スイス国境に近い山岳地帯、リヴィニョ(Livigno)です。
この場所の特殊性が、競技結果を大きく左右する可能性があります。
「空気が薄い」=「よく回る」?
リヴィニョの標高は約1,816m。日本のスキー場で言えば、志賀高原の最高地点に近い高さです。
平地に比べて酸素が薄く、空気密度が低いのが特徴です。
これが競技にどう影響するかというと、「空気抵抗が減る」のです。
空気抵抗が少ないということは、助走のスピードが上がりやすく、空中の回転スピードも落ちにくいということ。
つまり、平地よりも高回転の技が出やすい環境と言えます。
荻原選手の「2340」にとっても、この薄い空気は追い風になる可能性があります。
リカバリーの難しさと体力の消耗
一方で、デメリットもあります。
スピードが出すぎるため、着地の衝撃は平地以上に大きくなります。
また、酸素が薄いため、ハイクアップ(スタート地点への移動)や、試技を重ねることによる体力の消耗が激しくなります。
予選・決勝を通じて、いかに体力を温存し、集中力を保てるか。
リヴィニョという過酷な環境への適応能力も、金メダルへの重要な鍵となります。
2026年ミラノ五輪の展望と強力なライバルたち
今回の男子ビッグエアは、かつてない激戦が予想されています。
荻原大翔選手が金メダルを獲るためには、立ちはだかる巨大な壁を乗り越えなければなりません。
宿命のライバル:蘇 翊鳴(スー・イーミン)
北京五輪のビッグエア金メダリストであり、中国の英雄、スー・イーミン。
前述の通り、彼もまた日本のコーチと共に練習を積んできた時期があり、荻原選手とは「幼馴染のライバル」です。
北京五輪後、一時的に活動をセーブしていた時期もありましたが、2025-26シーズンに向けて完全復活を遂げています。
スー選手の持ち味は、圧倒的な高さと、映画のワンシーンのように美しい着地。
彼もまた1980(5回転半)や2160(6回転)を完璧に操る実力を持っています。
「高さとスタイルのスー」か、「回転と精度のオギワラ」か。
この二人の対決は、今大会最大のハイライトとなるでしょう。
日本の盟友:長谷川 帝勝(はせがわ たいが)
日本チーム内にも強力なライバルがいます。
2023年の世界選手権ビッグエア王者、長谷川帝勝選手。
彼は4方向すべての回転(フロントサイド、バックサイド、キャブ、スイッチバックサイド)で1980(5回転半)を成功させるという、世界初の偉業を成し遂げた「全方位型」の天才です。
回転軸の美しさでは世界一とも評され、昨年のX Gamesでは荻原選手に次ぐ銀メダルを獲得しています。
荻原選手が「縦」の強さなら、長谷川選手は「軸の安定感」と「対応力」が武器。日本人ワンツーフィニッシュも夢ではありません。
ノルウェーの天才:マーカス・クリーブランド
「ナックルハック」の生みの親であり、遊び心あふれるスタイルで世界中のファンを魅了するマーカス・クリーブランド。
彼は回転数競争とは一線を画す独自のスタイルを持っていますが、いざとなれば2160クラスの高回転もこなす底知れない実力者です。
もしジャッジの基準が「回転数偏重」から「スタイルの独創性」に揺り戻った場合、彼が最大の脅威となるでしょう。
今夜の予選・決勝を楽しむための観戦ガイド
さあ、いよいよ本番です。
テレビの前で応援する際、実況解説を聞くだけでなく、自分自身の目で「凄さ」を見極めるためのポイントを伝授します。
観戦ポイント①:着地の「ピタッ」を見逃すな!
ビッグエアの採点で最も重視されるのが「ランディング(着地)」です。
いくら空中で素晴らしい回転をしても、着地で手をついたり、バランスを崩して雪面を引きずったり(ドラッギング)すると、得点は大幅に減点されます。
荻原選手の真骨頂は、2340という超高回転をした後でも、まるで磁石で吸い付くように「ピタッ」と止まる着地にあります。
着地の瞬間、両手を広げてバランスを取り、微動だにせずに滑り降りていく。
この「ストンプ」が決まった瞬間こそ、金メダルが確定する瞬間です。
観戦ポイント②:予選での戦略(駆け引き)
本日の予選は、決勝に進むための上位12人を決める戦いです。
ここでは「絶対に失敗できない」というプレッシャーがかかります。
X Gamesのようなイベント色の強い大会では「新技・インパクト」が重視されますが、オリンピックを統括するFIS(国際スキー・スノーボード連盟)の大会では、「完成度・安全性」がより厳格に評価される傾向があります。
そのため、予選からいきなりリスクの高い「2340」を出してくる可能性は低いかもしれません。
まずは確実に成功率の高い「1980」や「2160」で点数を確保し、決勝進出を確定させてから、決勝の大舞台で「2340」を解禁する。
そんな戦略的な駆け引きも予想されます。
しかし、もし他のライバルたちが予選から高得点を連発すれば、荻原選手も黙ってはいられません。
「予選はあえて2340を封印するのか?それとも攻めるのか?」
その駆け引きこそが、玄人好みの見どころです。
放送スケジュール(日本時間)
以下のスケジュールをしっかりチェックして、歴史的瞬間に備えてください。
- 27:30(AM 3:30):男子ビッグエア 予選 Run 1
- 28:15(AM 4:15):男子ビッグエア 予選 Run 2
- 29:00(AM 5:00):男子ビッグエア 予選 Run 3
※日本時間は現地時間(CET)+8時間です。
※公式スケジュールにはRun 3まで記載されていますが、通常、予選は「2本の試技を行いベストスコア採用」の形式で行われることが多く、決勝は「3本滑りベスト2本合計」となるケースが一般的です。当日の天候や参加人数によりフォーマットが変更される可能性がありますので、最新の実況をご確認ください。
※地上波、BS、またはTVerなどのネット配信での視聴が可能です。
スノーボードの未来を変える「2340」の意義
最後に、少し視点を広げてみましょう。
荻原大翔選手が挑戦していることは、単にメダルを獲るためだけのことではありません。
かつて、スノーボードは「遊び」の延長だと思われていました。
しかし、アスリートたちが命がけで技術を磨き、物理的な限界に挑み続けることで、今やオリンピックで最も視聴率を稼ぐ人気競技の一つへと成長しました。
「2340」という技は、人間の可能性がまだ限界に達していないことを証明するシンボルです。
もし今大会で彼がこの技を成功させれば、次の世代の子供たちは「僕は2520(7回転)を目指す!」と言い始めるでしょう。
荻原大翔は、そうやって未来の扉をこじ開けようとしているのです。
まとめ:寝不足覚悟で見る価値がある!
いかがでしたでしょうか。
荻原大翔選手と、彼が操る魔法の技「バックサイド2340」、そして決戦の地リヴィニョについて解説してきました。
- 荻原大翔(おぎわら ひろと)は、骨折をおして世界初の2340を成功させた不屈のエース。
- 「バックサイド2340」は、空中で6回転半回る、常識外れの大技。
- 技名は差別的表現を避けるため、「ウェドルグラブ」と呼ぶのが現在のスタンダード。
- 開催地はミラノではなく、標高1,800mの山岳リゾート「リヴィニョ」。薄い空気が大技を後押しする。
- ライバルのスー・イーミンや長谷川帝勝との激闘は必至。
- 決戦の予選は、日本時間 今夜27:30(明日早朝3:30)スタート!
明日の朝、ニュースで結果を知るのも良いですが、奇跡が起きるその瞬間をリアルタイムで共有することには、何にも代えがたい感動があります。
コーヒーを用意して、暖かくして、テレビの前で日本代表を応援しましょう。
がんばれ、荻原大翔!
世界を驚かせる「6回転半」を、リヴィニョの夜空に描いてくれ!