比較グラフの作り方マスター講座!ExcelからBIツールまで、見やすいグラフ作成の全手順とコツを徹底解説【完全ガイド2025年版】
2025/09/08
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「複数の商品の売上を、ひと目でわかるように比較したい」
「会議で使う資料に、もっと説得力を持たせたい」
「データは手元にあるけど、どんなグラフを使えばいいのか、比較グラフの作り方がわからない」
もしあなたがこのような悩みを抱えているなら、この記事はまさにあなたのためのものです。
ビジネスの現場から学術研究、さらには日々の家計管理に至るまで、データを「比較」する場面は数多く存在します。
そしてその比較を最も効果的に行うツールが「グラフ」なのです。
しかし、ただグラフを作れば良いというわけではありません。
目的に合わないグラフを選んだり、情報が詰め込まれすぎて見づらかったりすると、伝えたいことが正しく伝わらないどころか、かえって誤解を生む原因にもなりかねません。
この記事では、経験豊富なデータ分析の専門家が、2025年現在の最新情報に基づき、「比較グラフの作り方」の全知識を体系的に、そして圧倒的な情報量で解説します。
この記事を最後まで読めば、あなたは以下のスキルを完全に習得できます。
- 目的やデータの種類に応じて、最適な比較グラフを自信を持って選べるようになります。
- 日々の業務で使うExcel、Googleスプレッドシート、PowerPointでの具体的なグラフ作成手順を、明日からすぐに実践できます。
- 単なるグラフ作成に留まらず、「見やすい」「伝わる」比較グラフを作るための本質的なデザインの秘訣が身につきます。
- より高度なデータ分析を可能にする、BIツール(Tableauなど)でのグラフ作成の第一歩を踏み出せます。
あなたの「比較グラフの作り方」に関するあらゆる疑問に終止符を打つことが目標です。
さあ、データを最強の武器に変える旅を始めましょう。
この記事の目次(クリックでジャンプ)
第1部:比較グラフの基礎知識 - 最適なグラフの選び方
比較グラフの作り方を学ぶ最初のステップはツールの使い方を覚えることではありません。
「どのグラフを、何のために使うのか」を理解することです。
この章では比較グラフの基本的な役割と、目的別に最適なグラフを選ぶための知識を深掘りします。
1-1. なぜ比較にグラフを使うのか?表との決定的な違い
データを示す方法としてグラフの他に「表(テーブル)」があります。
ではなぜ私たちはグラフを使うのでしょうか?
それはグラフが持つ圧倒的な「視覚的インパクト」と「直感的な理解の促進力」にあります。
- 視覚的なインパクト: 人間の脳は数字の羅列よりも図形やパターンを素早く認識します。表に並んだ売上データとにらめっこするより、棒グラフで「A支店が突出して高い」と一瞬で理解できる方が遥かに効率的です。
- 傾向、パターン、異常値の発見: 折れ線グラフを見れば、売上が右肩上がりなのか、季節変動があるのかといった「傾向」が直感的にわかります。また、一つだけ大きく外れたデータ点(異常値)も簡単に見つけ出すことができます。
表は正確な数値を伝えるのに優れていますが、データ間の関係性や全体像を素早く掴むにはグラフが最適なツールなのです。
データドリブンな意思決定が求められる現代において、この「素早さ」は極めて重要な要素です。
1-2.【目的別】代表的な比較グラフの種類と作り方の基本
ここではビジネスシーンで頻繁に使われる代表的な比較グラフを7つ紹介します。
それぞれの特徴と「どのような比較をしたいか」という目的に応じた使い分けをマスターしましょう。
棒グラフ: 量の大小を比較する王道グラフ
目的: 項目間の数値を単純に比較したい時。
棒グラフはデータの「量」や「大きさ」を比較するための最も基本的なグラフです。
店舗別の売上高、製品別の出荷数、アンケートの回答者数など、連続性のない項目同士を比較するのに最適です。
作り方も簡単で誰にとっても理解しやすいのが最大のメリットです。
利用シーン:
- 競合他社との市場シェア比較
- 各営業担当者の月間成績比較
- Webサイトの流入チャネル別ユーザー数比較
折れ線グラフ: 時間の経過に伴う変化を比較する
目的: 時系列データの推移や傾向を比較したい時。
折れ線グラフは時間(年、月、日など)の経過とともにデータがどのように変化したかを示すのに適しています。
気温の変化、株価の推移、Webサイトのアクセス数の変動など、連続性のあるデータのトレンドを視覚化するのに力を発揮します。
複数の折れ線を使えば複数項目の推移を同時に比較することも可能です。
利用シーン:
- 自社と競合の過去5年間の売上推移比較
- キャンペーン前後でのWebサイトのPV数変化
- 月ごとの気温とアイスクリームの売上数の関係比較
円グラフ/ドーナツグラフ: 全体に対する構成比を比較する
目的: ある全体に対して、各項目がどれくらいの割合を占めているかを示したい時。
円グラフは全体を100%としてその内訳や構成比率を示すのに使われます。
市場全体のシェア、費用の内訳、アンケートでの年代別回答者比率など、「全体の中での位置づけ」を比較したい場合に有効です。
ただし注意点もあります。
項目数が多すぎると(一般的に6項目以上)、各要素の比較が困難になりかえって分かりにくくなります。
その場合は次に紹介する積み上げ棒グラフなどを検討しましょう。
利用シーン:
- ある年度の売上における各事業部の割合比較
- 広告費の内訳(Web広告、雑誌広告、テレビCMなど)の比較
- 顧客満足度調査における評価(満足、普通、不満)の割合
積み上げ棒グラフ: 内訳を比較しながら全体量も示す
目的: 項目ごとの全体量を比較しつつ、その内訳も同時に比較したい時。
積み上げ棒グラフは一本の棒の中に複数のデータ要素を積み重ねて表示します。
これにより各項目の合計値の比較と、その内訳の構成の比較を同時に行うことができます。
例えば各支店の総売上を比較しながら、それぞれの支店の「商品A」「商品B」「商品C」の売上内訳がどうなっているかを示すことができます。
利用シーン:
- 複数店舗の総売上と、各店舗の製品カテゴリ別売上の内訳比較
- 年代別の総人口と、その中の男女比の内訳比較
- 四半期ごとの総経費と、その中の人件費・マーケティング費・その他経費の内訳比較
100%積み上げ棒グラフ: 構成比率の変化を比較する
目的: 全体量ではなく、構成比率がどのように変化したかを比較したい時。
通常の積み上げ棒グラフが「絶対量」を示すのに対し、100%積み上げ棒グラフは各棒の高さをすべて100%に揃え、「構成比率」の変化に特化して見せるグラフです。
例えば市場規模の大小に関わらず、各社がどのような製品ラインナップの比率で戦っているかを比較したい場合に非常に有効です。
利用シーン:
- 各年度の売上構成比(国内/海外)の変化を比較
- スマートフォンのOSシェアの年次推移を比較
- 顧客層の年代別構成比率を支店ごとに比較
レーダーチャート: 複数項目のバランスを比較する
目的: 複数の評価項目におけるバランスや特徴を比較したい時。
レーダーチャートは中心から放射状に伸びた各軸に評価項目を割り当て、その値を線で結んで多角形を作るグラフです。
複数の対象(製品、人材、競合他社など)が、様々な側面でどのような強み・弱みを持っているか、そのバランスを直感的に比較できます。
多角形の形の歪み具合から全体のバランスを評価するのに適しています。
利用シーン:
- 製品Aと製品Bの性能(価格、機能、デザイン、サポート)の比較
- 個人のスキルセット(論理的思考力、コミュニケーション能力、技術力)の評価
- 複数のWebサイトの評価(使いやすさ、情報量、表示速度)の比較
散布図: 2つの数値データの関係性を比較する
目的: 2つの異なる変数(データセット)の間に相関関係があるかを探りたい時。
散布図は横軸と縦軸にそれぞれ異なる数値を割り当て、データを点としてプロットするグラフです。
点の分布を見ることで、2つの要素間に関連性があるか(例:片方が増えるともう片方も増える「正の相関」など)を視覚的に捉えることができます。
例えば「広告費」と「売上」の関係を分析し、広告費を増やすことが売上増に繋がるかを判断するのに役立ちます。
利用シーン:
- 店舗の広さと売上高の関係性の分析
- 社員の勉強時間とテストの点数の関係性の分析
- 気温とビールの販売数の関係性の分析
第2部:【実践編】ツール別・比較グラフの作り方
基礎知識を学んだところでいよいよ実践です。
この章では多くの人が日常的に利用する3つのツール(Excel, Googleスプレッドシート, PowerPoint)を取り上げ、具体的な比較グラフの作り方をステップ・バイ・ステップで、これ以上なく詳細に解説します。
2-1. Microsoft Excelでの比較グラフの作り方
Excelはグラフ作成機能が非常に豊富で、ビジネスシーンで最も広く使われているツールです。
基本的なグラフから応用的なグラフまで、Excelがあれば大抵の比較グラフは作成可能です。
より詳細な機能を知りたい方は、Microsoftの公式サポートページを参照するのも良いでしょう。
準備: 比較に適したデータテーブルの作り方
良いグラフは良いデータから生まれます。
グラフを作成する前に元となるデータを整理しましょう。これは美味しい料理を作るための下ごしらえと同じくらい重要です。
- 1行目に見出しを置く: A1セルは空欄か、全体のタイトル(例:店舗別・月別売上表)を入れます。B1, C1...には項目名(例:4月, 5月, 6月)を入れます。
- A列に比較対象を入れる: A2, A3...には比較したい対象(例:新宿店, 渋谷店, 池袋店)を入れます。
- セルは絶対に結合しない: 見出しなどでセルを結合すると、グラフ作成時にExcelがデータを正しく認識できない最大の原因になります。見た目を整えたい場合は「セルの書式設定」→「配置」→「選択範囲内で中央」を使いましょう。
- 数値データに単位やカンマを入れない: 「10,000円」のように文字列として入力せず、数値の「10000」だけを入力します。書式設定で「¥」や桁区切りカンマを表示させるのが正しい方法です。これによりExcelはデータを「数値」として認識し、正しく計算・グラフ化できます。
基本の棒グラフ・折れ線グラフの作成手順
- データ範囲の選択: 作成したデータテーブル全体(見出しを含む)をマウスでドラッグして選択します。
- 「挿入」タブからグラフを選択: Excelのリボンから「挿入」タブをクリックします。「グラフ」グループの中に、棒グラフや折れ線グラフなどのアイコンが直感的に表示されます。
- グラフの種類の選択: 例えば棒グラフのアイコンをクリックすると、「2-D 縦棒」「3-D 縦棒」などの選択肢が表示されます。まずは最もシンプルで誤解の少ない「集合縦棒」を選びましょう。クリックすると、シート上にグラフが自動で作成されます。
- 基本的な書式設定: グラフが選択された状態でリボンの「グラフのデザイン」タブや「書式」タブを使えば、色の変更、スタイルの適用、グラフタイトルの編集などが簡単に行えます。まずはグラフタイトルを分かりやすいものに変更することから始めましょう。
応用① 複合グラフの作り方(棒グラフと折れ線グラフの組み合わせ)
売上金額(棒グラフ)と利益率(折れ線グラフ)のように、単位の異なるデータを1つのグラフで比較したい場合に複合グラフが役立ちます。
このテクニックをマスターすれば、データからより深い洞察を得ることができます。
- データ範囲の選択: 棒グラフにしたいデータと折れ線グラフにしたいデータの両方を含む範囲を選択します。(例:月、売上金額、利益率の3列)
- 「挿入」タブ > 「おすすめグラフ」: 「挿入」タブから「おすすめグラフ」をクリックし、開いたウィンドウで「すべてのグラフ」タブを選択します。
- 「組み合わせ」を選択: 左側のリストから一番下にある「組み合わせ」を選びます。
- グラフの種類と第2軸の設定: ここが最も重要なポイントです。各データ系列(売上金額、利益率など)に対して、グラフの種類(集合縦棒、マーカー付き折れ線など)をプルダウンで選択します。利益率のように単位が異なるデータは、右側にある「第2軸」のチェックボックスをONにします。これにより、グラフの右側に利益率専用の新しい軸が作成され、スケールの全く違うデータが1つのグラフ内で共存できるようになります。
- 「OK」をクリック: 設定が完了したら「OK」をクリックすると、説得力のある複合グラフが作成されます。
応用② スパークラインで簡易比較グラフを作る方法
スパークラインは、セルの中に収まる非常に小さなグラフです。
大きなグラフを置くスペースはないけれど、データの傾向を素早く比較したい、という場合に絶大な効果を発揮します。
- スパークラインを表示させたいセルを選択します。
- 「挿入」タブの「スパークライン」グループから、「折れ線」または「縦棒」を選びます。
- 「データ範囲」に、グラフ化したい数値データが入力されているセル範囲(例:
B2:D2)を指定し、「OK」をクリックします。 - セルのフィルハンドル(右下の■)をドラッグすれば、下の行にも簡単にスパークラインをコピーでき、一覧性の高いトレンド比較表が完成します。
Q. Excelでグラフを作ると、いつもデザインがイマイチになります。どうすればいいですか?
A. まずはExcelにプリセットされている「グラフスタイル」を試してみるのがおすすめです。「グラフのデザイン」タブから選ぶだけで、プロがデザインしたような洗練された見た目に一瞬で変更できます。そこから、第3部で解説するデザインのコツを適用して、さらに自分好みにカスタマイズしていくのが良いでしょう。
2-2. Googleスプレッドシートでの比較グラフの作り方
Googleスプレッドシートは無料で利用でき、クラウド上で複数人と同時に編集できるのが大きな魅力です。
基本的なグラフ作成機能はExcelと非常によく似ており、Excel経験者ならすぐに使いこなせます。
Googleはデータ可視化に関する優れた記事も公開しており、Google Designのデータビジュアライゼーションに関する記事は一読の価値があります。
Excelとの違いとメリット
- リアルタイム共同編集: 複数のメンバーが同時にアクセスし、グラフを編集したりコメントを残したりできます。リモートワークでの連携に最適です。
- Webへのインタラクティブな埋め込み: 作成したグラフをWebサイトやブログに簡単に埋め込むことができます。埋め込んだグラフは元のスプレッドシートのデータが更新されると自動で反映されます。
- 強力なバージョン管理: 「変更履歴」機能で、誰がいつどのような変更を加えたかを簡単に確認し、必要であれば過去のバージョンに復元できます。
- 自動保存: 変更はすべて自動でクラウドに保存されるため、保存忘れの心配がありません。
基本的なグラフ作成手順
- データ範囲の選択: Excelと同様に、グラフ化したいデータ範囲を選択します。
- 「挿入」メニューから「グラフ」を選択: メニューバーの「挿入」をクリックし、「グラフ」を選びます。
- グラフエディタでのカスタマイズ: 画面右側に「グラフエディタ」が表示されます。ここがGoogleスプレッドシートの心臓部です。「設定」タブでグラフの種類(棒、線など)を変更したり、データ範囲を調整したりできます。「カスタマイズ」タブでは、グラフの色、タイトル、軸、凡例、グリッド線などを非常に細かく設定できます。
Googleスプレッドシートは、選択したデータの内容をAIが判断し、最初に最適なグラフを提案してくれることが多いです。
そこから自分の目的に合わせて種類や設定を調整していくのが効率的な使い方です。
2-3. Microsoft PowerPointでの比較グラフの作り方
PowerPointの目的は、聴衆にメッセージを効果的に伝え、説得し、行動を促すことです。
そのためPowerPointで使う比較グラフは、情報量を極限まで絞り、シンプルで一瞬で理解できることが何よりも重要になります。
PowerPoint内で直接グラフを作成する方法
- 「挿入」タブ > 「グラフ」: スライド上でグラフを挿入したい場所を決め、「挿入」タブから「グラフ」をクリックします。
- グラフの種類の選択: Excelと同じように、棒グラフや円グラフなどの種類を選ぶウィンドウが表示されます。目的のグラフを選んで「OK」をクリックします。
- データシートの編集: グラフと同時に、Excelのような小さなデータシートが表示されます。このシートに数値を入力・編集すると、リアルタイムでスライド上のグラフに反映されます。プレゼン直前の急な修正にも対応しやすい方法です。
Excelで作成したグラフをPowerPointに美しく貼り付ける方法(リンク貼付の活用)
複雑なデータや頻繁に更新するデータの場合は、Excelでグラフを作成し、それをPowerPointに貼り付ける方が圧倒的に効率的です。
この時、ただのコピー&ペーストでは本当の力を発揮できません。貼り付け方を選ぶことが重要です。
- Excelで作成したグラフを選択し、
Ctrl + Cでコピーします。 - PowerPointのスライドに移動し、
Ctrl + Vで貼り付けます。 - 貼り付けたグラフの右下に表示される「貼り付けのオプション」アイコンをクリックします。
ここには複数の選択肢がありますが、特に重要なのは以下の2つです。
- 「埋め込み」系(左側の2つのアイコン): PowerPointのデザインに合わせた見た目になり、データはPowerPointファイル内に保存されます。元のExcelファイルを変更しても反映されません。PCにExcelが入っていない環境でも表示・編集できるメリットがあります。
- 「リンク」系(右側の2つのアイコン): ★これが最強におすすめ★ PowerPointのデザインに合わせた見た目を保ちつつ、元のExcelファイルとデータがリンクされます。後からExcelの数値を修正すると、PowerPointのグラフも更新通知が表示され、ワンクリックで最新の状態にできます。データ更新の可能性がある場合や、複数の資料で同じグラフを使い回す場合に絶大な威力を発揮します。
「データをリンク」する方法を使えば、「急な仕様変更で元データが変わった!パワポのグラフを全部作り直しだ…」という悲劇を完全に防ぐことができます。
第3部:【デザイン編】ワンランク上の見やすい比較グラフを作る10のコツ
正しい種類のグラフを選び、ツールで作成できるようになったら、次のステップは「伝わるデザイン」です。
この章では、あなたの比較グラフを劇的に分かりやすくするための、普遍的なデザインのコツを紹介します。
これらの原則は、省庁が発行する統計資料などでも重視されており、信頼性の高い情報伝達の基礎となります。
参考として、日本の統計データを司る総務省統計局の「グラフの種類」ページは、公的な資料作成の観点からも非常に勉強になります。
3-1. 情報を正確に伝えるための基本ルール
1. タイトルは具体的に書く
Before: 「売上比較」
After: 「【2024年度下半期】関東主要3支店の月別売上推移比較」
良いタイトルは、「いつ」「どこで」「何を」「どのように」比較したグラフなのかが一目でわかるものです。
見る人が「これは何のグラフだろう?」と考える時間をゼロにすることを目指しましょう。
2. 単位(円、%、人など)を必ず明記する
縦軸や横軸のラベル、データラベルに必ず単位を入れましょう。
「売上」とだけ書かれていても、それが「千円」なのか「百万円」なのかで、受け取る側のインパクトは全く変わってしまいます。
特に第2軸を使った複合グラフでは、左右の軸それぞれに単位を明記することが必須です。
3. 凡例を分かりやすく整理する
複数のデータ系列がある場合、凡例は必須です。
しかし、「系列1」「系列2」のようなデフォルト名のままでは意味がありません。
「新宿店」「渋谷店」のように、内容がわかる名前に必ず変更しましょう。
また、凡例はグラフの近くに配置し、視線の移動が少なくなるように配慮することも重要です。
可能であれば凡例を使わず、データ系列の終端に直接系列名を書く「ダイレクトラベリング」という手法も非常に効果的です。
4. データソース(出典)を明記し、信頼性を高める
特に社外向けの資料や公的なレポートでは、グラフの右下などに「出典:〇〇株式会社 2025年調査」のようにデータソースを明記することで、グラフの信頼性が格段に向上します。
これは「このデータは私が勝手に作ったものではなく、客観的な事実に基づいています」という証明になります。
3-2. 視覚的に訴えるデザインテクニック
5. 配色:色は雄弁、されど使いすぎは禁物
色は情報を強調したりグループ化したりするのに強力なツールですが、使い方を間違えるとノイズにしかなりません。
- 強調は1色だけ: 最も見てほしいデータ系列(自社など)だけを目立つ色(コーポレートカラーなど)にし、他の比較対象(競合他社など)はグレーや薄い青など、無彩色に近い色にすると、メッセージが明確になります。全ての棒がカラフルな虹色のグラフは、一見華やかですが、どこを見れば良いのか分からず、結果的に何も伝わりません。
- 色の意味を統一する: ポジティブな意味(増加、達成など)には青や緑、ネガティブな意味(減少、危険など)には赤、というように色の持つ一般的なイメージを活用すると、直感的な理解を助けます。資料全体でこのルールを統一することが重要です。
- ユニバーサルデザインへの配慮: 特定の色の組み合わせが見分けにくい色覚特性を持つ人々にも配慮し、色だけでなく、線の種類(実線、破線)やマーカーの形(●、▲、■)を変える、パターン(縞模様など)を適用するなどの工夫をしましょう。
6. 情報量:引き算のデザインを心がける
優れたインフォグラフィックは、足し算ではなく引き算で作られます。
伝えたいメッセージに関係のない視覚情報はノイズです。
「Less is more(少ないことは、より豊かなことだ)」の精神で、不要な要素を削ぎ落としましょう。
- グラフの枠線: 多くの場合、不要です。削除すると、スライドや紙面とグラフが一体化し、洗練された印象になります。
- 補助線(グリッド線): 細かい数値を読み取る必要がないプレゼン資料などでは、補助線を削除するか、非常に薄いグレーにすると、主役であるデータが際立ちます。
- 不要な小数点: 「35.78%」のように細かすぎる数値は、多くの場合「36%」で十分です。情報の精度と分かりやすさのバランスを取りましょう。
7. 軸の調整:誤解を招かない範囲で、変化を分かりやすく
データの変化を強調したい場合、軸の最大値や最小値を調整することがあります。
例えば、すべてのデータが80から100の間に収まっている場合、縦軸の最小値を0ではなく70に設定すると、変化が大きく見えます。
これは有効なテクニックですが、やりすぎると変化を誇張し、見る人に誤解を与える危険性もはらんでいます。
特に棒グラフでは、棒の「長さ」で量を比較するため、原則として縦軸は必ず0から始めるのが鉄則です。
これを破ると、比較の前提が崩れ、データの印象操作と受け取られかねません。
8. データラベルの活用:具体的な数値で説得力アップ
グラフの棒や点の上に直接数値を表示する「データラベル」は、正確な値を伝えたい場合に非常に有効です。
ただし、すべてのデータ点にラベルを表示すると煩雑になるため、最も重要な点(最大値、最新の数値、自社の値など)にだけ表示するのが効果的です。
伝えたいメッセージに合わせて、どこに視線を誘導したいかを考え、戦略的に配置しましょう。
3-3. やってはいけない!比較グラフのNG例
9. 3Dグラフの乱用
3D(立体的)なグラフは、一見すると格好良く見えますが、正確な比較には全く向いていません。
手前と奥で棒の高さの認識がずれたり、円グラフの面積が歪んで見えたりするため、ビジネスや学術的な目的での使用は絶対に避けるべきです。
データビジュアライゼーションの専門家は、3Dグラフを「チャートジャンク(グラフのゴミ)」と呼ぶことさえあります。
10. 円グラフの項目が多すぎる
前述の通り、円グラフの項目は5つ程度が限界です。
それ以上になると、各項目のスライスが細かくなりすぎて比較が困難になります。
項目が多い場合は、素直に棒グラフを使いましょう。
どうしても構成比を見せたい場合は、主要な項目だけを円グラフで見せ、残りを「その他」としてまとめるなどの工夫が必要です。
第4部:【応用編】さらに高度な比較グラフの作り方とデータ分析の思考法
Excelやスプレッドシートをマスターしたら、次はデータ分析の世界をさらに広げるBI(ビジネスインテリジェンス)ツールの領域に足を踏み入れてみましょう。
4-1. ビジネスの意思決定を加速するBIツールとは?
BIツールとは、企業に蓄積された大量のデータを分析・可視化し、経営や業務における意思決定を支援するためのソフトウェアです。
代表的なツールには以下のようなものがあります。
- Tableau (タブロー): 直感的で美しいビジュアライゼーションが特徴。ドラッグ&ドロップの簡単な操作で、高度な分析が可能です。無料版の「Tableau Public」から試せます。世界中のユーザーが作成したグラフがTableau Publicのギャラリーで公開されており、インスピレーションの宝庫です。
- Looker Studio (旧Googleデータポータル): Googleが提供する無料のBIツール。GoogleアナリティクスやGoogle広告、スプレッドシートなど、Google系のサービスとの連携が非常にスムーズです。Webマーケティングのデータ分析には特に強力です。
- Microsoft Power BI: Excelとの親和性が高く、Microsoft 365を業務で多用している企業に導入されやすいツールです。Excelの知識を活かしながらステップアップできます。
Excelとの決定的な違い
BIツールはExcelと比べて、特に以下の点で優れています。
- 扱えるデータ量: Excelが数十万行を超えると動作が重くなるのに対し、BIツールは数百万〜数千万行以上の巨大なデータも高速に処理できるよう設計されています。
- インタラクティブなダッシュボード機能: 複数のグラフや表を一つの画面にまとめて、操作可能な「ダッシュボード」を簡単に作成できます。例えば、ダッシュボード上の地図で「関東」をクリックすると、関連する全てのグラフが関東のデータだけで絞り込まれる、といった動的な分析が可能です。
- データソースへの自動連携: 様々なデータベースやクラウドサービスに直接接続し、常に最新のデータでグラフを自動更新できます。「月初のレポート更新作業」といった手作業から解放されます。
4-2. Tableau Publicを使った基本的な比較グラフの作り方(入門)
ここでは、BIツールの雰囲気を掴むために、無料のTableau Publicを使った簡単な比較グラフの作り方を紹介します。
- データの接続: Tableau Publicを起動し、分析したいデータ(Excelファイルやテキストファイルなど)に接続します。
- ディメンションとメジャーの理解: Tableauはデータを自動的に「ディメンション(分析の切り口、カテゴリデータ。例:製品名、地域)」と「メジャー(分析したい数値データ。例:売上、数量)」に分類します。これがデータ分析の基本単位です。
- ドラッグ&ドロップでグラフ作成:
- 画面左の「ディメンション」から「製品カテゴリ」を中央の「列」シェルフにドラッグ&ドロップします。
- 画面左の「メジャー」から「売上」を中央の「行」シェルフにドラッグ&ドロップします。
これだけの操作で、製品カテゴリ別の売上棒グラフが自動で作成されます。Excelのようにグラフの種類を先に選ぶ必要はありません。
- 表現方法の変更: 右上の「表現形式」から、ワンクリックで棒グラフを円グラフや表形式、ヒートマップなどに自由に変更できます。データを様々な角度から眺める試行錯誤が非常に簡単に行えます。
4-3. 比較グラフからインサイトを導き出す思考法
グラフ作成は、それ自体が目的ではありません。
グラフから何らかの「気づき(インサイト)」を得て、次のアクションに繋げることがゴールです。
- 「So What?(だから何?)」を常に問う: 「A支店の売上がB支店より20%高い」という事実(Fact)で終わらせてはいけません。「だから何なのか?」「なぜその差が生まれたのか?」と問いを立てることが重要です。(例:A支店は新しいキャンペーンが成功したのではないか? B支店は競合店が近くにオープンした影響か?)
- 比較の軸を変えてみる: 店舗別の比較で見えなかったことも、商品別、顧客の年代別、時間帯別など、比較の軸を変えることで新たな発見があるかもしれません。BIツールはこうした軸の切り替えを得意としています。
- 仮説を立て、検証する: 「もしかして、気温が高い日ほど売上が上がるのではないか?」といった仮説を立て、それを検証するために散布図を作ってみる。この「仮説→検証」のサイクルを回すことが、データ分析の醍醐味です。
明日からあなたが実践すべきこと
長い旅にお付き合いいただき、本当にありがとうございました。
この記事では、比較グラフの基本的な考え方から、ツール別の具体的な作り方、本質的なデザインのコツ、そしてBIツールという新たな世界まで、「比較グラフの作り方」に関する現時点で考えうる全てを網羅的に解説してきました。
最後に、本記事の最も重要なポイントを凝縮して振り返りましょう。
- 目的が全て: グラフ作成で最も重要なのは、「誰に」「何を」伝えたいのかという目的意識です。目的が明確になれば、選ぶべきグラフは自ずと決まります。
- ツールは手段: Excelもスプレッドシートも、あくまで目的を達成するための手段です。それぞれのツールの特性を理解し、目的に応じて使い分けることが重要です。
- デザインは引き算: 優れたデザインは、情報を詰め込むのではなく、不要なものを削ぎ落とすことで生まれます。伝えたいメッセージを一つに絞り、それを最大限に際立たせることを常に意識しましょう。
- 分析で終わらせない: グラフを作って満足するのではなく、そこから「So What?」を問いかけ、具体的なアクションに繋げることで、初めてデータは価値を生みます。
さあ、インプットは十分すぎるほどです。
次はアウトプットの番です。
まずは、あなたの一番身近にあるデータ(例えば、毎月の食費、仕事のプロジェクト進捗、好きなゲームの戦績など、何でも構いません)を使って、簡単な棒グラフを一つ、作ってみてください。
そして、今日学んだデザインのコツを一つでもいいので適用してみてください。
例えば、「グラフの枠線を消す」だけでも、あなたの作るグラフは昨日よりも格段に分かりやすく、説得力のあるものになるはずです。
この記事が、あなたのデータ活用ライフ、そしてキャリアにおける、価値ある一助となればこれ以上の喜びはありません。
ぜひこのページをブックマークして、今後グラフ作成に迷ったときに、いつでも見返してください。
