南鳥島レアアース採掘がついに始動!「ちきゅう」出港で見えた日本の資源革命と全貌【2026年最新】

   

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2026年1月13日。この日付は、日本の資源エネルギー史において、後世まで語り継がれる重要な転換点として記憶されることになるでしょう。

ニュースをご覧になった方も多いはずです。昨日、2026年1月12日、海洋研究開発機構(JAMSTEC)が誇る地球深部探査船「ちきゅう」が、静岡県の清水港から静かに出港しました。

行き先は、東京から南東へ約1,900キロメートル離れた絶海の孤島、南鳥島(みなみとりしま)。
その目的は、単なる学術調査ではありません。世界初となる「水深6,000メートルからのレアアース泥(でい)採掘試験」という、国家の命運をかけた巨大プロジェクトの実証実験がついに始まったのです。

電気自動車(EV)、風力発電、スマートフォン、そして防衛産業。これら現代社会を支えるあらゆるハイテク製品に不可欠な「産業のビタミン」ことレアアース。
長年、その供給の大部分を中国に依存し、地政学的なリスクに晒され続けてきた日本が、ついに「資源自給」への扉をこじ開けようとしています。

本記事では、この歴史的な出港の意義から、南鳥島の深海に眠る資源の驚くべきポテンシャル、世界を驚愕させた日本の採掘技術、そして立ちはだかる課題まで、現時点(2026年1月)で判明している全ての情報を網羅し、徹底解説します。

なぜ、南鳥島なのか?
なぜ、今なのか?
そして、私たちの生活はどう変わるのか?

深海6,000メートルの暗闇に光を当てる、日本の挑戦の全貌を紐解いていきましょう。

【速報】2026年1月、南鳥島レアアース採掘試験がいよいよ始動

まずは、現在進行形で進んでいるプロジェクトの最新状況を整理します。

地球深部探査船「ちきゅう」が挑むミッション

今回、南鳥島海域へ向かった探査船「ちきゅう」は、人類史上最高の掘削能力を持つ科学船です。全長210メートル、高さ130メートル(海面からデリック頂部まで)。その姿は、海に浮かぶ巨大な要塞のようです。

通常、地震発生メカニズムの解明や海底下の生命圏探査などに使われるこの船が、今回は「資源開発」という実利的なミッションのために投入されました。これは政府の本気度の表れと言えます。

複数の報道(日本経済新聞、産経新聞など)によると、今回の航海における具体的なミッションは以下の3点です。

  • 揚泥(ようでい)システムの動作実証:水深6,000メートルという極限環境下までパイプを降ろし、海底の泥を船上まで吸い上げるシステムが、計算通りに稼働するかを確認します。
  • 実際のサンプリング:単に機械を動かすだけでなく、実際にレアアース泥を回収し、その成分や性状をその場で分析します。
  • 環境モニタリング:採掘作業が深海の生態系や水質にどのような影響を与えるか、リアルタイムでデータを収集します。

世界初「水深6,000メートル」の壁

「たかが泥を吸い上げるだけではないか」と思われるかもしれません。
しかし、相手は水深6,000メートルの深海です。

ここにかかる水圧は約600気圧。指先ほどの面積に軽自動車1台が乗っているのと同じ圧力です。さらに、海面から海底までは、富士山の高さ(3,776メートル)の1.5倍以上もの距離があります。

過去、世界各国で海底資源の開発試験が行われてきましたが、その多くは水深1,000メートルから2,000メートル程度の海域でした。6,000メートル以深(超深海)からの連続的な揚泥試験は、人類にとって未踏の領域であり、今回の試験が成功すれば世界初の快挙となります。

2028年の商業化を見据えたロードマップ

政府および「レアアース泥・マンガンノジュール開発推進コンソーシアム」が描く今後のスケジュール(目標)は以下の通りです。

  • 2026年1月(現在):「ちきゅう」による実機を用いた短期揚泥試験。
  • 2027年度:日量350トン規模の泥を引き上げる、より大規模かつ長期的な実証試験を計画中。ここで経済性評価のための詳細データを取得します。
  • 2028年以降:民間企業へ技術移転を進め、商業採掘への移行を目指すシナリオが描かれています。

もちろん、これらは試験の結果次第で変更される可能性がありますが、まさに今、日本は実験室のフェーズを終え、産業化への第一歩を踏み出したのです。

(出典:南鳥島EEZ海域でのレアアース泥採鉱システム接続試験の実施について | JAMSTEC

なぜ「南鳥島」なのか? 世界を驚愕させた資源の正体

そもそも、なぜこれほどまでに南鳥島が注目されているのでしょうか。
その理由は、そこに眠る資源の「質」と「量」が、従来の常識を根底から覆すものだったからです。

日本の救世主「レアアース泥(Rare-earth-rich mud)」

2011年、東京大学の加藤泰浩教授(現・工学部長)らの研究チームによって、太平洋の深海底に高濃度のレアアースを含む泥が広範囲に分布していることが発見されました。

特に南鳥島周辺の排他的経済水域(EEZ)内で発見された泥は、極めて質が高いことが判明しました。
通常の陸上鉱山(中国など)で採掘されるレアアース鉱石の濃度が数百ppm(100万分の1)程度であるのに対し、南鳥島のレアアース泥は、過去の調査地点のデータによると、場所によっては5,000ppmから7,000ppmを超える超高濃度を示した例もあります。

これは、「泥をすくえば、それがそのまま高品位の資源になる」ことを意味します。岩盤を爆破したり、硬い岩石を砕いたりする必要がないため、採掘のプロセス自体は非常にシンプルになります。

EV時代に不可欠な「重希土類」の宝庫

レアアース(希土類)は17種類の元素の総称ですが、産業界で特に重要視されているのが「重希土類(ヘビーレアアース)」と呼ばれるグループです。

  • ジスプロシウム (Dy)・テルビウム (Tb):
    これらは、EVのモーターに使われる「ネオジム磁石」の耐熱性を高めるために絶対に必要な元素です。これらがないと、EVは高速走行時の熱で磁力を失い、動かなくなってしまいます。

これまで、この重希土類は中国南部の「イオン吸着型鉱床」という特殊な地層からしか商業的に産出されていませんでした。まさに中国の独占状態です。
しかし、南鳥島のレアアース泥には、このジスプロシウムやテルビウムが豊富に含まれていることが確認されています。

日本の需要を「数百年分」カバーする圧倒的埋蔵量

2018年に公表された東京大学や早稲田大学などの研究グループによる推計によると、南鳥島EEZ内の特定エリア(約2,500平方キロメートル)だけでも、約1,600万トン(酸化物換算)のレアアースが存在するとされています。

これを当時の日本の年間消費量に換算した試算データは以下の通りです。

  • イットリウム(液晶・レーザー用):国内需要の約780年分相当
  • ユーロピウム(発光体用):国内需要の約620年分相当
  • テルビウム(高性能磁石・蛍光体用):国内需要の約420年分相当
  • ジスプロシウム(EVモーター磁石用):国内需要の約730年分相当

「数年分」ではありません。「数百年分」です。
もちろん、これらをすべて経済的に採掘できるかは今後の技術開発にかかっていますが、ポテンシャルとしては日本がレアアース輸入国から一転して、世界有数の輸出国になれる可能性を秘めています。

採掘技術の核心:深海6,000メートルからどう引き上げるか

埋蔵量が豊富でも、それを取り出せなければ絵に描いた餅です。
南鳥島プロジェクトの最大の壁は、「水深6,000メートルから泥を引き上げる技術」の確立にありました。

日本独自の技術応用「エアリフトシステム」

深海から物を引き上げる方法として、当初は水中ポンプを使う方式も検討されました。しかし、6,000メートルの深海でモーターなどの精密機械を動かすことは、故障リスクが極めて高く、メンテナンスも困難です。

そこで採用されたのが、「エアリフト技術」を応用した独自の揚泥システムです。

仕組みは以下の通りです。

  1. パイプの設置:船から海底まで、全長6,000メートルに及ぶ太いパイプ(ライザーパイプ)を降ろします。
  2. 圧縮空気の注入:パイプの途中(例えば水深2,000メートル付近)から、船上のコンプレッサーで作った高圧の圧縮空気をパイプ内に送り込みます。
  3. 上昇流の発生:送り込まれた空気は気泡となり、膨張しながらパイプ内を上昇します。これにより、パイプ内部の密度が軽くなり、強力な上昇水流が発生します。
  4. 泥の吸引:この上昇流が生み出す負圧(吸い込む力)によって、海底の泥が海水と一緒にズボズボと吸い込まれ、一気に船上まで運ばれます。

この方式の最大の利点は、「泥が通過するパイプ内部に、モーターや回転翼などの駆動部品が一切ない」ことです。
故障の原因となる機械部品を海中に沈めなくて済むため、信頼性が高く、連続運転に適しています。まさに、逆転の発想から生まれた日本独自の技術体系と言えるでしょう。

レアアース採掘がもたらす経済安全保障上のメリット

このプロジェクトが成功すれば、日本の立ち位置は劇的に変わります。

1. 「チャイナリスク」の完全無効化

2010年の尖閣諸島漁船衝突事件の際、中国はレアアースの対日輸出を事実上停止しました。いわゆる「レアアース・ショック」です。当時、日本の産業界は大混乱に陥り、資源依存の恐ろしさを痛感しました。

さらに2025年、中国は「国家安全保障」を理由に、レアアースの精製技術や関連設備の輸出規制をさらに強化しました。
南鳥島での採掘が実現すれば、こうした他国の政治的意図による供給途絶リスク(資源の武器化)を無効化できます。これは、日本の製造業にとって最強の保険となります。

2. 放射性物質を含まない「クリーンな資源」

環境面でも大きなメリットがあります。
陸上のレアアース鉱山では、採掘時にトリウムやウランなどの放射性物質が副産物として出てしまうことが多く、その処理が環境汚染の原因となってきました。

一方、学術研究(ScienceDirect等に掲載された論文)によれば、南鳥島周辺の深海堆積物は、陸上鉱床に比べてトリウムやウランの濃度が低い傾向にあると報告されています。
「採掘しても放射能汚染のリスクが低い」という点は、環境意識(ESG)が高まる現代の市場において、日本産レアアースの強力なブランド価値となります。

光と影:南鳥島レアアース採掘に残された課題

ここまで希望に満ちた話をしてきましたが、実用化に向けては解決すべきシビアな課題も残されています。

1. コスト競争力の壁

最大の課題は「経済性」です。
深海採掘には、探査船の燃料費、巨大な設備の維持費など、莫大なコストがかかります。一方で、中国などの陸上鉱山は、すでに償却済みの設備で安価に生産しています。

もし市場価格が下落した際、高コストな深海レアアースは価格競争で負けてしまう可能性があります。「採れる」だけでなく、「安く採れる」技術への昇華が必要です。

2. 深海生態系への影響

深海底は、生物多様性の観点からも重要なエリアです。
採掘によって泥を巻き上げると、「プルーム」と呼ばれる濁りが広がり、深海生物の呼吸を妨げたり、生態系を破壊したりする懸念が、資源エネルギー庁や環境保護団体からも指摘されています。

日本は国際海底機構(ISA)のルールを遵守し、厳格な環境モニタリングを行いながら、「環境と開発の両立」を世界に示す責任があります。

3. 「製錬」プロセスの国内欠如

意外な盲点ですが、日本には採掘した泥からレアアースを取り出し、製品レベルまで高める「製錬(せいれん)・分離」を行う大規模な工場がほとんどありません。
これまでは「精製済みのもの」を輸入していたため、国内にその工程を持つ必要がなかったのです。

泥を採掘できても、それを精製するために海外へ送っていては本末転倒です。採掘技術とセットで、国内でのサプライチェーン(製錬・合金化)を再構築することが急務となっています。

資源自律国家への第一歩

南鳥島でのレアアース採掘プロジェクト。それは、資源小国と揶揄されてきた日本が、自らの手でその運命を変えようとする壮大な挑戦です。

2026年1月、「ちきゅう」の出港によって、その挑戦は新たなフェーズに入りました。
水深6,000メートルの暗闇から引き上げられる泥は、単なる鉱物資源ではありません。それは、日本のハイテク産業を守り、経済安全保障を確立し、次世代に豊かな国を引き継ぐための「希望の塊」なのです。

もちろん、コストや環境問題など、乗り越えるべき壁は高く険しいものです。しかし、技術者たちの情熱と、国家としての意思がある限り、不可能なことではありません。

今後数週間で届けられるであろう、「揚泥成功」のニュースにぜひ注目してください。
その瞬間、日本の未来図は大きく書き換えられることになるでしょう。

(参考文献・リンク:JOGMEC 海洋鉱物資源の概要 / 東京大学 レアアース泥開発推進コンソーシアム

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